おなかクリニックは、地域に根差した内科・消化器科を中心としたクリニックです。地域のみなさまに「品質管理の行き届いた医療」や「苦痛の少ない、安全な内視鏡検査と治療」を提供し、実績を積み重ねてまいりました。地域の皆様の健康を支えるため、質の高い医療サービスとともに、利便性の向上にも力を入れています。そうした中で、患者さんの診療体験をより良くするためにキャッシュレス決済の導入を決断しました。
最大の理由は「現金管理の煩雑さ」でした。会計の締め作業の際に、実際の現金と帳簿の数字が合わないことがしばしば起こっていました。これを解決すべく、事務スタッフは毎回30分から長い時には2時間近く残業しながら、レジのレシートを一つひとつ確認して原因を探していたのです。これが非常に非効率で、スタッフの大きな負担となっていました。 さらに、キャッシュレス決済の導入を阻む大きな障壁は、クレジットカード会社の手数料の高さでした。医療機関の利益率は一般企業よりも低く、3〜5%もの手数料が発生すると、大きな負担になります。このため、キャッシュレスの導入がなかなか進まなかったのです。 しかし、2020年の新型コロナウイルス感染症の流行は、私たちの考え方を変えました。発熱外来における感染リスクを軽減するため、現金の受け取りを避け、キャッシュレスでの会計を推進する必要が生じたのです。これを機に、キャッシュレス決済への取り組みが加速しました。 コロナ禍では、感染症患者からのウイルス付着の恐れがある現金を直接受け取ることは大きなリスクとなりました。私たちは発熱外来を開始した際に、会計は原則キャッシュレスとすることを決定しました。電話やホームページでも、「当院はキャッシュレス決済対応」と明示し、患者さんに周知しました。 この取り組みは5年間続けられ、感染リスク軽減に一定の効果をもたらしました。とはいえ、どうしても現金しか使えない患者さんも多く、その際は受け取った現金を1枚ずつアルコールで丁寧に消毒して対応しました。キャッシュレスを利用できない患者さんが現在でも約10人に1人はいらっしゃいます。5類感染症への移行後は発熱外来の稼働も減り、キャッシュレス決済の重要性はやや落ち着きましたが、この期間の経験は当院にキャッシュレス決済の必要性と有用性を改めて認識させるものでした。
決め手になったのは、導入コストとシステムの簡便さ、そして「時間短縮」という観点からの患者さんへのサービス向上です。医療現場における患者さんのタイムマネジメントは極めて重要です。患者さんがクリニックに来てから帰るまでにかかる時間は、受付の待ち時間、診察の待ち時間、検査の待ち時間、会計の待ち時間の合計で膨大になります。特に、会計の待ち時間というのは、診療後に患者さんが感じる最も大きなストレスの一つです。私自身、病院に行く際の長い待ち時間に苦労した経験があり、これが改善されることはサービスの向上に直結すると確信しています。会計の迅速化は、患者さんにとってだけでなく、クリニックの運営効率向上にも繋がります。 また、CurePortの場合、大きな機器の設置も不要で、初期投資が抑えられる点も魅力でした。すでにクレジットカード決済は導入していましたが、それでも現金中心の運用を変えるにはハードルがありました。その中で、CurePortのスキームは診療後、すぐに帰宅いただけることを前提とする点が斬新でした。もちろん当初は「本当に決済されるのか?」という不安もありましたが、結果としては問題なく運用できています。また、CurePortは患者さんが来院後に決済を行うという特性がある一方で、チェックイン時に与信枠の確認が行われるため、事前に支払い可能かどうかが把握できる点は、運用面での安心材料となりました。
導入にあたっては、新しい業務フローをつくる必要がありました。これまでの会計フローに加えて、CurePort用の案内・登録業務が加わるため、最初は戸惑いもありました。スタッフへの周知は、毎朝の朝礼と、その後に配信する朝礼メールで行いました。事務スタッフ向けには説明会を開催して、CurePortの仕組みや運用方法をレクチャーしました。また、スタッフの多くが患者としても当院を利用しているため、自らもCurePortを使うことを推奨しています。新しい業務フローの追加は避けられないため、全員が同じ理解を持つための場づくりが重要だと感じています。 患者さんへは、ホームページへの掲載、クリニック内でのチラシ配布、ポスター掲示を行い、積極的に案内しました。初回は全患者さんにチラシを配布し、疑問や不安に対しては受付スタッフが丁寧に説明しました。医療機関側はCurePortをWebブラウザ上で利用できるため、専用ソフトのダウンロードやインストールが不要で、操作も比較的簡単です。診察が進むスピードによっては登録が途中で終わるケースもありましたが、会計後に声をかけて登録を促すなど、柔軟な対応を行っています。操作に慣れた患者さんや、以前からクレジットカード決済を利用している患者さんの受け入れはスムーズです。
現在、当院のキャッシュレス決済の利用率は全体の約56%程度まで上昇しています。高額な診療になることも多いため、特に手術や検査の費用をキャッシュレスで支払う患者さんが増えた印象です。 キャッシュレス決済の導入は決済手段の多様化につながり、患者サービスの向上に貢献しています。現金のみだった従来から、クレジットカードや交通系ICカード、QRコード決済など選択肢が増えたことで、患者さんの利便性は格段に上がりました。後払いという新たな選択肢を用意できたことは、患者サービスの向上に直結していると感じます。 将来的に他のシステムと連携し、データが一元化されれば、業務効率化はさらに進むと期待しています。
最終的な理想は「会計窓口をなくす」ことです。診察が終わったら、すぐ薬局に行ける。そのためには、処方箋や会計をすべて電子的に処理できる環境が必要です。現状では、予約、問診、受付、診療、会計と、各フローがバラバラのシステムで構成されています。これが一つのプラットフォームに統合されれば、患者さんにとっても、スタッフにとっても非常にスムーズな医療体験が提供できるでしょう。 また、電子カルテの共通化や、レセプトコンピューターとの連携も不可欠です。クリニックは病院と異なり、使用しているシステムがバラバラで、各システム間の連携ハードルも高くなりがちです。業界全体としての連携や標準化が進むことを期待しています。 CurePortは会計から現金をなくすという最終目標に向けた重要な一歩であり、今後さらに普及し、他のシステムと連携しながら進化していくことを期待しています。もしまた感染症が流行したとしても、安心して診療が継続できる環境を整えることが不可欠です。
医療の現場では「タイムマネジメント」が非常に重要です。特に患者さんにとってのストレスの一つは「待ち時間」です。診察時間を短縮することは難しくても、それ以外の時間(受付、検査、会計)の待ち時間をどう短縮するかが、患者満足度を左右する大きな要因になります。 CurePortはその「最後の会計待ち時間」を短縮する手段の一つです。患者さんの決済手段が増えたことでサービスの幅が広がり、クリニックの評価や存在感が高まったと感じています。またこれにより、患者さんの満足度が向上し、地域におけるクリニックの価値も一層向上したと実感しています。 新しいシステムの導入には、必ず不安や手間が伴います。しかし、長期的な視点で見れば、患者さんにとっても、スタッフにとっても、非常に大きなメリットがあります。導入に迷われている医療機関の方には、まずは小さなところからでも始めてみてほしいと思います。